我が国の水産業は、漁業資源の減少、漁業者数の減少、自給率の低下といった大きな問題を抱えている。
これら問題に対して、我が国水産業は、我が国食料の安定供給と全国沿岸域の振興のため、将来にわたって、安全で新鮮な水産物の安定供給の確保と水産業の健全な発展・漁村の振興を図って行くことが水産基本法及び水産基本計画において規定された。
こうした状況下で、2001年のBSEの発生・近年の食品業界全体を巻き込んだ産地偽造や違法表示など「食の安全性」が間われる問題が生じている。
水産業においても、水産物による食中毒の発生、産地の偽造、密漁漁獲物の流通など、水産物への安全性と合法性への信頼性が失われつつある。
このように、国民の水産物に対する信頼が失われることは、水産物の安定供給と水産業の健全な発展を阻み、漁村地域の衰退につながる道であり、永続的な対策が必要となっている。
その対策として、安定した信頼のおけるシステムの下に水産物の履歴を証明する「トレーサビリティシステム」をはじめとする水産物の安全安心な供給体制の構築が求められている。
そのため、旧来の「ラベル類と書類による生産者や流通販売業者の表示に頼る仕組み」から脱却し、「偽装・偽称を防止し消費者白らが生産流通履歴を確認できる情報化技術を利用したシステム及び産地における衛生管理体制」を構築する必要がある。
一方、漁業地域では、水産業が大学や研究機関との産学官連携を強化し、各地の地域特性を活かした水産振興構想(プロジェクト)を推進しようとしている。
国、都道府県においても地域の発想する振興構想および地域再生計画などで産学官連携を通じた水産振興を支援している。
水産業において生産者から消費者に至る間のトレーサビリティシステムや水産物の安全安心な供給体制構築を産学官の連携の下で調査研究し各方面に提言する事は、地域の二一ズや地域の発想ずる構想(プロジェクト)に連動するとともに、水産業の生産管理・流通管理の効率化が可能となり、水産業の振興に大いに寄与ずるものと考えられる。
そのことにより、水産業及び水産物に係る消費の安定、信頼性の向上と活性化、水産物に係る地域ブランド確立が促進され、我が国漁業地域の経済的波及効果が期待できるものと考える。
以上のような背景と目的に基づき、大学・試験研究機関・行政・生産者・流通業者・消費者で構成する「水産物トレーサビリティ研究会」を発足させ、トレーサビリティを中心とする調査研究の他、水産物の安全安心な供給体制の確立に関ずる調査研究を行い、各方面への提言を行うこととした。